すこしびっくりしながら、マールさんがやさしくキツネにたずねました。
「こんばんは、キツネさん。何かご用ですか?」するとキツネがマールさんのわかることばでこたえました。
「こんばんは、マールさん。今日はマールさんにおねがいがあってみんなをだいひょうしてやって来ました」
「どうか話をきいてください」
キツネはしんけんな目でそう言いました。
マールさんはどうしてキツネのことばがわかるのかふしぎでしたが、キツネがちょこんとすわって、首をちょっとかたむけて話すしぐさがとてもかわいらしいので、
「はい、どうぞお話しください」と、やさしくうなずいてこたえました。
「ありがとう。わたしは麦畑のむこうの森にすんでいるキツネです」キツネが話はじめました。
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「ひるま森の中にいますが、夜になるとみんなでさんぽをします」
「マールさんのお店の前は とてもいいにおいがするので、みんな大すきなばしょです」
「とくに明け方ちかくになると、それはそれはおいしそうなにおいがして、はやく家にかえって 食事をしたくなります。」
「いちどでいいから、あのおいしいにおいの食べ物を食べてみたいものだ」
「なんとかおねがいできないものだろうか?」
キツネはいっしょけんめいに、シッポをふりながら話をしました。
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マールさんは話をきくとうれしくなって、「うれしいなぁ。わたしの作るパンをキツネさんが食べてくれるなんて。そう考えてだけで心がワクワクしてくるよ」
「よし!それではみんなのためにとびきりおいしいパンを焼いてあげよう!」
「でもね、パンを焼くにはいろいろの材料をはかって、小麦粉をこねて、ふっくらとふくらませて、かたに入れて、またふくらませて、それからじっくり焼くんだ」
「だからとても時間がかかるんだよ」
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